仏陀(ブッダ)の誕生と美術 仏像美術vol.1

仏陀(仏陀)の誕生

仏教の開祖ブッダは釈迦(しゃか)、釈迦牟尼(しゃかむに)、釈尊(しゃくそん)とも言われていますが、本名は「ゴータマ・シッダールタ」と言う実在の人物です。仏陀(ブッダ)はもともと「目覚めた人(悟った人)」を意味する語で、釈迦という呼び名は、出身部族名からくる通称です。

仏陀はインド北部の小国の王子として誕生し、人生のさまざまな苦悩に心をいため、29歳で出家し、35歳のときに菩提樹(ぼだいじゅ)の下に座して悟りを得ました。その後、インド諸国を旅して周り、80歳でこの世を去るまで説法に努めました。仏陀の生まれや没年には諸説ありますが、仏陀の入没は紀元前480年ごろとされています。


仏陀の美術

仏陀の美術はこのころから制作がはじまりました。仏陀崇拝から生まれた美術の初期のころは、在俗信者のあいだで仏舎利(仏陀の遺骨)をおさめた仏塔(ストゥーパ)など、仏陀の遺物の崇拝がさかんに行われていました。その造営と荘厳(しょうごん - 装飾)が最初の仏教美術づくりとも言え、インド中部のサーンチーやバールフトに残る仏教遺跡はその代表的なものです。

仏陀美術の初期のころの遺跡では、仏塔を囲む石造の塔門や、欄楯(らんじゅん - 柵)に多くの浮彫がほどこされ、「仏伝図(ぶつでんず)- 仏陀の生涯を描いた図 」や「本生図(ほんじょうず)- ジャカータ・前世物語」などが彫られています。


人間のカタチをしていない仏陀 - 無仏像時代の彫刻

紀元前3世紀~前1世紀初頭のころの仏教美術には仏陀の姿は表されていません。このころ仏陀は人間のカタチをとらず、記号のようなものによって存在が示されるようになりました。この時代は「無仏像時代」と呼ばれています。

仏陀の象徴表現(記号)には足跡である仏足跡(ぶっそくせき - 仏足石)や、悟りを得た仏陀を象徴する菩提樹、古代インドの貴人の外出具である傘蓋(さんがい)、仏塔、法輪、台座、三宝標(仏・法・僧と呼ばれる3つの宝物)などがあり、これらの複数を組合わたした遺跡も残っています。

古い経典には「仏陀の身体は形象化できず、また測ることもできない」という意味のことばが記されていると言われています。当時の人々にとって、仏陀を生身の人間の姿であらわすことは畏れ多かったためだと推測されています。


菩提樹 (カナカムニ仏) の礼拝


仏陀の足跡と初期仏教美術

【仏教4大聖地】

ルンビニー 仏陀生誕・29歳で出家(紀元前6~前5世紀頃)
ブッダガヤー 菩提樹の下で悟りを得る
サールナート 初転法輪 - 初めての説法
クシナガラ 80歳で入減・仏塔に遺骨がおさめられる

● 初期仏教美術
仏塔を囲む欄楯の仏伝図などに仏陀が象徴表現(※1)で描かれる
(※1 仏塔、菩提樹、法輪、台座、仏足跡など)

仏像美術

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